技術屋カツヒサの徒然日記

電子回路系エンジニアが、気になったことを何となく書いてます

ANKER製 10000mAhモバイルバッテリーを買ってみた

先日、Amazonで18650型リチウムイオンの生電池を購入しましたが、その後、関連商品として18650型の「生じゃない」リチウムイオン電池とか、ANKERのモバイルバッテリーとかがAmazonページで表示されるようになりました。

さすがAmazonなかなか優秀な広告機能を持っていらっしゃる(笑)。

ちなみに生じゃない18650型リチウムイオン電池とは、例えば以下のような製品です。もともと18650型とは直径18mmで長さ65mmという寸法規格ですが、それは安全回路も何もついてない生電池の寸法です。

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その危険な生電池の先端(普通は+極側)に、過電流防止や過充放電防止の保護回路を組み込んだのが、普通に使われているリチウムイオン電池になります。
とはいえ、その保護回路は最後の砦と言うべきもので、その電池でさえ電気知識の無い一般人が簡単に入手できるのはおかしいんですが。

生電池と見分けるのは意外と簡単で、保護回路つき電池は乾電池そっくりに+電極が凸型になってます。生電池の場合、何個か並列に並べて電極板を溶接したりすることが多いので、両極とも平坦です。
リチウムイオン電池を乾電池のように使う場合(その状況そのものがヤバイ気がしますが)、片側が凸型になってないと直列接続時に電極が接触しなくて困ります。
自分で生電池を買ってるので説得力がありませんがリチウムイオン電池を買うなら保護回路つきを買いましょう

ところで、記事タイトルからも分かるとおり、惰性でANKER製 10000mAhモバイルバッテリー(世界最小)購入ボタンをクリックしてしまいました。
私が買った生電池(3400mAh)が1380円なのに、充放電回路もコミコミの10000mAhモバイルバッテリーが2299円とはナニゴト!?

メーカーHPの製品仕様を見ると寸法が 92✕60✕22mmです。どう考えても18650型バッテリーを3本並べてます。容量的にも、私が買った3400mAhバッテリーを3個並べたら10200mAhなので、端数を切り捨てたら丁度よい感じです。
中身は同じなんじゃないか?
下の写真は、それぞれ重さを測った写真を並べたものです。

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生電池3個の重さに、41.5グラムくらいの基板とケースがつけば丁度良い感じです。
ちなみに生電池を3個買うと4140円になります。
もしかして私は、わざわざ高い金を払って使いにくい生電池を買ったのでしょうか?

いやいや、何と言ってもモバイルバッテリーは中国製ですから、本当に10000mAhあるとは限りません。中国で売っているリチウムイオン電池は、容量が小さい(=重量が軽い)電池に、砂など重量物を詰めて重量合わせすることもあるそうですので。

Amazonの製品レビューには、モバイルバッテリーの4つのLEDは25%ずつ直線的に消えていくから分かりやすいとあります。とりあえずそれを信じると、充電していってLED点灯数が変わる間隔を測定すれば実容量が分かるはずです。

ということで充電してみました。

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ANKER製の24W充電器(2.4A出力✕2ポート)から、RouteR製のUSB電流計を経由して充電しました。右下にあるのはキッチンタイマーです。

充電を開始すると1個目のLEDが点灯、2個目が点滅しています。つまり初期充電量は25〜50%です。

  • 充電電流は約2.1A
  • 充電開始55分後に3個目のLEDが点滅
  • 更に71分経過後に4個目のLEDが点滅
  • 4個目点滅から5分たたずに電流減り始める
  • 4個目点滅から64分後の充電電流は1A前後
  • 4個目点滅から100分後、気づいたら全LED消灯


電流2.1Aで充電し、3個目と4個目の点滅開始間隔が71分(≒1.183時間)ということは、単純計算で2100mA✕1.183 ≒ 2484mAh がLED1個分の容量になります。つまり全体で2484mAh✕4=9936mAhとなり、ほぼ公称容量通りとなります。

ちなみに、時間はキッチンタイマーでそこそこ正確に測っていますが、LEDの状態変化は私が気づいたときにタイマー値を読んでますので多少の誤差があります。10000mAhより64mAh低いじゃないか!とか言ってメーカーに殴り込みをかけないように願います。

あと、充電するときは5Vで10000mAh(=50Wh)の電力を使っていますが、取り出せる電力はもっと小さいのでご注意下さい

わざと誤解させようとしている印象を受けますが、モバイルバッテリー業界の標準的な表記として、5Vで10000mAhではなく、リチウムイオン電池の公称電圧である3.6Vで10000mAh(=36Wh)というのが実際の容量で、5V出力で言うと7200mAhになります。

36Whのバッテリーを充電するのに何故50Whも電力が必要かと言うと、たぶん小型化のために充電回路を単純化したかったのでしょう。実際、5Vの充電電流で計算した容量が製品仕様と一致していますので、充電回路で余計な電圧分を熱として消費し、電流をそのままバッテリーに流し込むという一番単純な回路構造をとったのだと思います
充電中の電流測定でも、充電末期には滑らかに電流を減少させていくのが理想ですが、特に2Aから1Aにかけての領域で大きな脈流がありました。電流の平滑化に十分なだけの大きさのインダクタが、スペース的に搭載できなかったのだと思います。

世界最小にこだわらず、大型化と価格上昇を容認すれば、同じ電流で充電時間を3割ほど短縮できそうな気がします。
まぁでも、充電時間の3割短縮よりは、小さくて安いほうが嬉しいですよね。


なんだかんだで長文になってきたので、今日はここまでとします。