技術屋カツヒサの徒然日記

電子回路系エンジニアが、気になったことを何となく書いてます

18650型リチウムイオン電池の充放電回路(2)

前回に引き続き、18650リチウムイオン電池の充放電回路について検討します。
・・・と言いたいところですが、何となくAmazonサイトを見ていたら、怪しげな中国製のリチウムイオン電池充放電基板を見つけたので買ってみました
ちなみに110円(送料無料)です。

※ 中国製品は製造不良が多いです。
 通電前の目視検査は徹底しましょう。

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Amazon:HiLetgo 5V 1A 18650リチウムバッテリーチャージボード

Amazonのレビューを見た限りでは、そこそこ使えるような、怪しいような微妙な感じですが、実物が届いたので使っている部品を調べました

  • TP4056:充電制御IC
  • DW01A:バッテリー保護IC
  • FS8205A:Power MOS FETスイッチ

リチウムイオンの生電池を扱う場合、注意しなければいけない項目はいろいろありますが、特に重要なのが過充電と過放電に対する保護になります。

過充電保護も過放電保護も、電池電圧が許容範囲を超えそうになったら充放電経路を遮断します
特に難しいのは過放電保護で、保護回路そのものがリチウムイオン電池から電源をとって動作しているため、電池の放電を完全には遮断できないことが問題になります。

そのため、過放電保護には特別に消費電力が小さい専用ICを使うのが普通です。DW01Aは過充電/過放電/過電流/短絡から電池を保護する専用ICで、必要に応じてFS8205Aスイッチを使い、電流経路を遮断して電池を守ります。
正直言って、
これだけでも110円の価値は十分です。

DW01Aの仕様ですが、過充電保護電圧が4.30±0.05Vで、過放電保護電圧が2.40±0.10Vです。
NCR18650B電池の放電特性は下図の通り2.5Vまでしか描かれていないので、できれば2.5Vで放電を止めたいところです。DW01Aは電池電圧が2.4Vまで下がらないと遮断してくれませんので、できれば別に放電停止手段を設けたいところです。

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充電制御はTP4056が担当します。
定電流−定電圧方式で4.2Vまで充電する仕様となっており、4.2Vに達すると充電は止まるので、過充電に関してはDW01Aと合わせて二重の保護になります

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上の写真が、問題の基板(2枚分の割り基板)になります。

基板としては入力端子(充電側)と出力端子(放電側)が別々にあり、バッテリーへの充電と放電が同時にできる構造になっています。この場合、より正確な表現をするなら入力端子から出力端子に電流が流れるようになっているということです。

入力端子から流れてきた電流は、全て充電制御IC(TP4056)を介してバッテリーに供給されます。
TP4056は定電流−定電圧方式で供給電流をコントロールしますが、電流値はR3で決められています(最大1A:下の表を参照)。標準で実装されているR3は1.2kΩで供給電流は最大値の1Aになっていますが、特に問題ないのでそのまま使います。
なお、定電圧充電時の電圧は4.2V固定となっています。

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TP4056のデータシートによると、入力電圧範囲は4.0〜8.0Vとなっています。
ただし、ICの中でバッテリー電圧まで電圧降下させて電流をコントロールするため、バッテリー電圧が低いときはIC発熱が大きくなります

USB充電器から電源をとると入力電圧は5Vとなり、バッテリー電圧の下限は2.4Vですので、(5.0V − 2.4V)✕1A=2.6Wもの発熱がTP4056で発生します
一応、下の外観写真のようにICウラ面に放熱用のサーマルパッドがあり、基板上の放熱パッドに半田付けして基板に熱を逃がすように考慮はされています

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更に、基板ウラ面は下の写真のようになっており、黄色で囲ったTP4056部分に基板の表裏を接続するビア穴が大量にあり、オモテ面の放熱パッドからビア穴経由でウラ面ベタパターンに熱を逃がすようになっています

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とはいえ、基板のサイズは 26x17mmしかありませんので、基板全体を自然空冷しても、それほど効果は期待できません
対策として、以下の2点を実施します。

  • 5V入力と基板入力の間に抵抗かダイオードを入れて、動作する下限電圧(4.0V)近くまで電圧を落として発熱を抑える。1Ω抵抗を入れれば1A電流で丁度1Vの電圧降下となるが、USB入力電圧が5Vより少しでも低いと下限電圧(4V)以下になる可能性があるので、抵抗を使うなら1Ωより小さくする(入手しやすい抵抗値を選定)。
  • 絶縁タイプの放熱用両面テープで、基板ウラ面をアルミケース等に貼り付けて熱を逃がす

こんな感じで、だいたい充放電回路の使い方が固まってきました。
とりあえず、今回はここまでにします。