技術屋カツヒサの徒然日記

電子回路系エンジニアが、気になったことを何となく書いてます

リチウムイオンバッテリーの安全性について知ろう

スマホのバッテリーについて一通り書き終えたつもりでしたが、アクセス解析を見ると、多発するリチウムイオン電池爆発事故の影響か、バッテリーの安全性に関する過去記事へのアクセスが多いようなので、あらためて情報を整理しようと思います。

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まず基本的な話として、リチウムイオンバッテリーの通常使用電圧範囲は 2.7〜4.2Vです4.2Vを超えると過充電領域2.7V未満は過放電領域と呼ばれます。あとで説明しますが、過充電領域と過放電領域での使用がバッテリーの危険性を高めます

上の図は一定電流で放電していった際のバッテリー電圧曲線です。バッテリーの公称容量が2000mAhだとすると2000mAを1C電流と表現します。この例で言えば、200mAが0.1C、400mAが0.2Cです。
放電電流によって違う電圧曲線が描かれているのは、バッテリーにも内部抵抗があるため大電流放電すると(内部抵抗✕電流)だけ出力電圧が下がるためです。

見れば分かると思いますが、常に大電流を消費してホカホカ温かいスマホはバッテリー電圧が下がった状態で使ってます。バッテリー容量の少ない機種を使っている人は経験があるかもしれませんが、写真撮影のフラッシュ等で瞬間的に消費電流が増え、電圧が下がりすぎるとスマホの電子回路が動作不良(再起動など)を起こす事があります
ちなみに私のスマホは3000mAhのバッテリーが載っていますが、ただ画面を表示しているだけで200〜300mA(0.1C弱)、ちょっと操作すると600〜700mA(0.2C強)くらい消費します(Accu​Batteryアプリで測定)。

 
ところで、スマホバッテリーが膨らんでいるのを見て危機感を抱く人は多いと思いますが、リチウムイオンバッテリーは正常に使っていても膨らみます
自動車のメンテナンスを自分でやっている人は実感があると思いますが、自動車用バッテリーは開放型の構造をしているので、横に倒すと電解液がこぼれてしまいます。なぜ開放型になっているかというと、充放電するとガスが発生するため密閉すると内圧が高まり破裂する危険があるからです。

ガスの発生は全ての電池に当てはまりますが、大電流を流さなければガス発生量も少なく危険度が低いため密閉されています。それでも危険はゼロではないため、密閉式電池には一定以上圧力が高まると開放されるガス抜き弁があります。爆発するよりは安全に破れて中身が漏れ出したほうが安全だろうという性質のものですので、ガス抜き弁が働いた電池は使えません。液漏れした乾電池がそれです

さて、「大電流を流さなければガス発生量が少ない」ということは、大電流を流すリチウムイオンバッテリーは普通に使っていても必ずガスが発生します。下の図は18650型と呼ばれる一般的な円筒形リチウムイオン電池の構造図ですが、見ての通り圧力が高まると開放される安全弁がついています。

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危険なリチウムイオンバッテリーとは
私は、開放弁が働かず爆発するまで膨らみ続けるバッテリーが危険だと思います。私はスマホ開発に関わったことが無いので分かりませんが、良くネット上でパンパンに膨らんだバッテリーの写真を目にすることがあります。あれは、明らかに設計から危険なバッテリーだと思います。

ちなみにリチウムイオンバッテリーでは、正常電圧範囲で使っていても可燃性ガス(炭化水素)が発生します。爆発よりマシだとはいえ、安全弁から安全じゃない可燃性ガスが噴き出してきたら危険じゃないのか?ということも思いますので、それも考慮して、スマホのバッテリーには安全弁が無いのかもしれません

とりあえずバッテリーが膨らんできたら、ショップに持って行って相談しましょう。
ただし、最近の大容量バッテリーを積んだスマホはバッテリーを外せません。開けられない構造にして、スマホ本体を頑丈にして爆発しても被害を小さくするのが目的かもしれませんが、バッテリーを目視できないと危険度が分からなくて困ります

私の考える、せめてもの自衛策は以下のとおりです。

  1. 急速充電しない(ガス発生量が増えます)
  2. 過充電しない(4.1Vで充電を止めてます)
    過去記事 参照
  3. 過放電しない(3.6Vくらいが限界)


ちなみになぜ過充電や過放電がマズイかというと、正常範囲と劣化メカニズムが違っていて、どちらも多量の気体を発生します。詳細は参考サイト②を見て頂きたいですが、過充電では酸素が発生します。
通常の使用では可燃性の炭化水素が発生し、過充電領域では酸素が発生する。まさに発火時の爆発条件が整えられているわけです。

リチウムイオンバッテリーの発火事故は、10年以上前からたびたび問題になってきました。バッテリー製造に原因があった場合もあれば、充電回路側に原因があったこともあります。いずれにしても、自分のスマホが他のスマホと比べて以上に電池持ちが悪いといった違いを感じたら、メーカーに初期不良じゃないか相談するべきと思います。

私は自衛策として購入直後で何も他のアプリを入れない状態で、BatteryMixアプリで放電履歴を記録してスクリーンショットを撮っています
私の場合は特に中国メーカーのSIMフリースマホだったので、購入直後に初期化した上で、絶対に言い訳できない状態にしてから(不具合があれば)証拠を残すようにしていました。
 

 【参考サイト】
リチウムイオン電池の話:株式会社ベイサン
電力研究所 研究報告:リチウムイオン電池の劣化メカニズムの解明
リチウムポリマー電池の安全性について


とりあえず、今日はここまでとします。